内陸地震研究グループ

研究グループの概要

 観測センターには、東北地方に展開している地震・地殻変動観測点のデータのみならず、日本全国の観測点の地震波形データやGPS(汎地球測位システム)観測データが集められています。本研究グループでは、この観測網で得られるデータを用いて、地震活動と結びついた地球内部の動的な構造に関するさまざまな研究を行っています。例えば、内陸地震の発生メカニズムについて、「プレートの沈み込みに伴って上部マントルで生じたマグマがモホ面直下に達して地殻下部の温度が上昇し、またそこでのマグマの固結に伴って水が放出されて、この高温と水が地震発生域下部を軟らかくすることにより、その浅部に応力が集中して大地震発生に至る」というモデルを構築しました。このモデルは「何故、内陸の特定の領域に活断層が発達し大地震に至るのか」という謎に答えを与えるものであり、内陸地震の長期予測の高度化に役立つと期待されています。
 また、GPSのデータ解析により、過去のプレート境界型大地震の震源域が現在固着していることを明らかにしました。さらに、微小地震観測データの解析により、プレート境界のまったく同じ場所で繰り返し発生している小さな地震(小繰り返し地震;相似地震)を多数発見しました。これらの研究成果は室内でのすべり実験による成果とも結びつき、「アスペリティ (普段は固着していて地震時に大きくすべる領域)の位置は不変である」とするアスペリティ・モデルが正しい事を示す明確な証拠となりました。
 このように、地震の発生が空間的にも時間的にも決してランダムではないことが示されたことは極めて重大な成果であり、現在、国が行っている大地震発生の長期評価に根拠を与えるものとなっています。またアスペリティのまわりの安定すべり(ゆっくりとしたすべり) をモニターすれば、アスペリティへの応力の集中や歪エネルギーの蓄積状況を把握することができることになりますので、そのようなモニタリングは長期予測の高度化のみならず短期予測にも役立てられると期待されます。
 地震発生予測の高度化には、地震発生過程を深く理解することが不可欠です。一方、地震は地下深くの岩盤内のすべり破壊によって起こるため、その実態を明らかにするのは非常に難しいのです。本研究グループでは、岩石試料に断層面を作り、すべりの発生から拡大にいたる過程を明らかにする実験やその結果を用いた数値実験により、地震の発生過程をより深く理解する試みも行っています。

構成メンバー

教授(代表) 松澤 暢
教授 三浦 哲
教授 趙 大鵬
准教授 矢部 康男
准教授 岡田 知己
准教授 内田 直希
准教授(兼任) 福島 洋
准教授 山本 希
准教授 太田 雄策
助教 高木 涼太
助教 吉田 圭佑
助教 市來 雅啓
助教 豊国 源知
助教 東 龍介

※ 一人の教員は複数の研究グループに所属します。◎は主たる所属が本グループであることを示します。

研究成果

プレート境界地震の発生様式

沈み込み帯の構造とマグマ生成・上昇

島弧地殻の変形様式と内陸地震