海域地震研究グループ

研究グループの概要

 東北日本のような島弧-海溝系でしばしば発生する巨大な地震の多くは、陸側のプレートとその下に沈み込む海洋性プレートとの境界で発生すると考えられています。このように被害地震になりかねないような、「プレート境界地震」の予知をすすめるためには、このような地震が発生する仕組みを理解する必要があります。そこで、東北大学では、海陸間のプレート境界ではどのような現象が進行していて、また、どのような状況になっているのか、を詳しく明らかにするために、様々な観測を行っています。
 プレート境界で起こる地震や地殻変動を詳しく研究するには、プレート境界にできるだけ近い場所で観測を行うことが最も有効だと、私たちは考えています。日本周辺の主なプレート境界が海底下にあります。そこで、私たちは海底に地震計などのセンサーを設置して行う、海底観測をすすめています。
 私たちの研究グループは、太平洋側・日本海側ともにプレート境界型の大きな地震が発生するような東北地方において、こうした海底観測を推進するために平成9年度に設置されました。
 海洋プレートが沈み込むような場所(沈み込み帯)の研究は、私たちのように地震予知をめざすものにとっては当然ですが、地球科学全般から見ても非常に意味のあることです。沈み込み帯では、地球の表面を覆う地殻の生成・成長・進化でもっとも重要なプロセスが進行しています。さらに、地上の物質が地球内部へと取り込まれてそれがリサイクルされるという、グローバルスケール(全地球規模)の物質循環を考える上でも、沈み込み帯の果たす役割は大きいと考えています。
 このようにグローバルな観点にたって研究を進めるために、私たちは多くの国内外の研究機関と共同して、観測・研究を行っています。例えば、国内では、北海道大学・東京大学・千葉大学・京都大学・鹿児島大学などの国立大学の他、気象庁・防災科学技術研究所・地質調査所・海上保安庁水路部や海洋科学技術センターなどと共同して、東北地方を含めた日本全国で研究を進めています。
 私たちの観測の主力は今のところ、自己浮上式海底地震計です。高感度の地震計を電源やレコーダーとともに海底に設置して、2ヶ月程度の間、地震観測を行います。観測が終了すると、機材はデータともに回収されます。こうして得られたデータは、プレート境界やその側での地震活動(どんなタイプの地震が、どこで、どれくらいの頻度で起こっているのか)の研究や、プレート境界周辺の構造(どんな物質が、どのような形態で分布しているのか)の研究に使われています。
 最近になって、いわき沖や三陸沖に長期間連続して観測することが可能な海底地震観測システムが設置されました。こうしたシステムにより、これまでの短期間の海底地震観測では分からなかったような新しい発見が次々と成されています。しかし、こうしたシステムを数多く展開することは難しいため、現在の自己浮上式海底地震計の高性能化(センサーの高性能化、長期観測型の開発)のための努力も行っています。
 プレート境界では、地震計では捉えることのできない、ゆっくりとした変動現象もあるのではないかと考えられています。こうした現象を捕まえるためには、地殻変動の観測を行わなければいけません。海底での地殻変動観測には、様々な技術的困難がありますが、それも技術開発の進展により夢ではなくなりつつあります。海洋性プレートが陸の下へ沈み込んでいる様子を、直接観測することができるようになる日もそう遠くはないと思っています。

構成メンバー

教授(代表) 日野 亮太
教授(兼任) 木戸 元之
教授 松澤 暢
教授 三浦 哲
教授 趙 大鵬
准教授 太田 雄策
准教授 矢部 康男
准教授 岡田 知己
准教授 内田 直希
准教授(兼任) 福島 洋
助教 東 龍介
助教 市來 雅啓
助教 高木 涼太
助教 吉田 圭佑

※ 一人の教員は複数の研究グループに所属します。◎は主たる所属が本グループであることを示します。

研究成果

海底地殻変動観測

海溝型地震に関する調査研究

研究航海