2005年8月16日11時46分に、宮城県東方沖を震源とするMj7.2の地震が発生しました。東北大学地震・噴火予知研究観測センターによる、この地震の震源(暫定値)は以下のとおりです。
震源時:2005年8月16日 11時46分26.2秒 緯度:38.14° 経度:142.30° 深さ:25.2km
学術誌に投稿された研究成果[2006/9/7 掲載]
- Hino, R., Y. Yamamoto, A. Kuwano, M. Nishino, T. Kanazawa, T. Yamada, K. Nakahigashi, K. Mochizuki, M. Shinohara, and K. Minato, G. Aoki, N. Okawara, M. Tanaka, M. Abe, E. Araki, S. Kodaira, G. Fujie, and Y. Kaneda, Hypocenter distribution of the main- and aftershocks of the 2005 Off Miyagi Prefecture Earthquake located by ocean bottom seismographic data, Earth Planets Space, 2006, in press
- Okada, T., T. Yaginuma, N. Umino, T. Kono, T. Matsuzawa, S. Kita, and A. Hasegawa, The 2005 M7.2 MIYAGI-OKI earthquake, NE Japan:Possible rerupturing of one of asperities that caused the previous M7.4 earthquake , Geophys. Res. Lett., 32, doi:10.1029/2005GL024613, 2005.
- Uchida, N., T. Matsuzawa, S. Hirahara and A. Hasegawa Small repeating earthquakes and interplate creep around the 2005 Miyagi-oki earthquake (M7.2), submitted to Earth Planet. Space, 2006.
- Umino, N., T. Kono, T. Okada, J. Nakajima, T. Matsuzawa, N. Uchida, A. Hasegawa, Y. Tamura, and G. Aoki, Revisiting the three M~7 Miyagi-oki earthquakes in the 1930s : Possible seismogenic slipon asperities that were re-ruptured during the 1978 M7.4 Miyagi-oki earthquake, Earth Planets Space, 2006, in press.
- Yamamoto, Y., R. Hino, M. Nishino, T. Yamada, T. Kanazawa, T. Hashimoto, and G. Aoki, Three-dimensional seismic velocity structure around the focal area of the 1978 Miyagi-Oki earthquake, Geophys. Res. Lett., 33, doi:10.1029/2005GL025619, 2006
- Yaginuma, T., T. Okada, Y. Yagi, T. Matsuzawa, N. Umino and A. Hasegawa, 2006, Co-seismic slip distribution of the 2005 off Miyagi earthquake (M7.2) estimated by inversion of teleseismic and regional seismograms, Earth. Planet. Space. 2006, in press.
- 有吉慶介・松澤暢・矢部康男・長谷川昭・加藤尚之, 2006, 沈み込みプレート境界における断層セグメント間の相互作用, 地震2,投稿中.
- 長谷川昭, 2006, 想定宮城県沖地震の震源域で何が起きているか?, 自然災害科学, 25(No. 1), 4-8.
- 日野亮太・鈴木健介・山本揚二朗・西野実・金沢敏彦・山田知朗・中東和夫・望月公廣・桑野亜佐子・青木元・田中昌之・荒木英一郎・小平秀一・藤江剛・金田義行,2006,海底地震計観測による2005年8月16日に発生した宮城県沖の地震の余震分布(速報),地震2, 投稿中.
- 河野俊夫・海野徳仁・長谷川昭, 2006, 1930年代,宮城県沖に発生した3つのM7クラスの地震の震度分布について, 地震2,投稿中.
- 三浦哲・油井智史・飯沼卓史・佐藤俊也・立花憲司・長谷川昭,2006,2005年宮城県沖地震(M7.2)に伴った地震時・地震後地殻変動から推定されたプレート境界面上のすべり分布,地震2,投稿中.
- 内田直希・松澤暢・三浦哲・平原聡・長谷川昭, 2006, 小繰り返し地震解析による宮城・福島県沖プレート境界の準静的すべり, 地震2,投稿中.
- 海野徳仁・河野俊夫・岡田知己・中島淳一・松澤暢・内田直希・長谷川昭・田村良明・青木元,2006, 1930年代に発生したM7クラスの宮城県沖地震の震源再決定-1978年宮城県沖地震のアスペリティでのすべりだったのか?-,地震2, 投稿中.
- 柳沼直・岡田知己・長谷川昭・加藤研一・武村雅之・八木勇治, 2006, 近地・遠地地震波形インヴァージョンによる2005年宮城県沖の地震(M7.2)の地震時すべり量分布 – 1978年宮城県沖地震(M7.4)との関係, 地震2, 投稿中.
本震・余震の分布と地震活動
震源域周辺のプレート間すべりの時空間発展
過去の宮城県沖地震との比較
- DD法による2005年宮城県沖、1978年宮城県沖地震の本震・余震分布とすべり量分布
- 1933年,1936年,1937年,1978年の宮城県沖地震の震源域の比較
- 宮城県沖で発生した過去の大地震の震源再決定
陸上、海底観測網とその記録
まとめ
解析結果から,
(1) 宮城県沖ではアスペリティが複数ある。
(2) 1978年はこれらのアスペリティが同時に壊れたが,その前の活動時には,まず1936年に東部のアスペリティが壊れ,その翌年の1937年に西部のアスペリティが壊れた。
(3) 今回の地震も1936年と同様に1978年の震源域の南東部のアスペリティのみを破壊した。
という仮説が考えられます。つまり,「宮城県沖地震」は「東南海・南海地震」と同様に,ある時は複数のアスペリティが同時に壊れ,ある時は少し時間を置いて壊れるという仮説です。
宮城県沖では1933年にもM7.1の地震が発生しており,東北大では,今後,この1933年の地震も含めて解析することにより,宮城県沖地震の再来モデルを高度化していく予定です。特に今回の地震が1936年の震源域のさらに一部を破壊した(つまり割れ残しは1937年の震源域よりも大きい)のか,1936年と同程度(割れ残しも1937年の震源域と同程度)なのか,の検証は今後の活動を推定するうえで極めて重要であるため,1936年の地震の規模についても再検討を行う予定です。
第165回・第166回地震予知連絡会
地震予知連絡会に提出した資料をPDFで公開しています。
過去の地震予知連絡会資料は、地震予知連絡会資料からダウンロードできます。
関連情報
- 宮城県沖の地震(2005/8/16)で震度6弱を記録した宮城川崎町震度計の地震動(筑波大学 境 有紀博士のページ)
- 「2005年8月16日宮城県沖の地震による津波」(東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター)
- 「2005年8月16日宮城県沖の地震の津波計算結果」(東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター)
- 「2005年8月16日11時46分頃の宮城県沖の地震について(第六報)」(気象庁)
- 「2005年8月16日11時46分頃の宮城県沖の地震について(地震解説資料第5号)」(仙台管区気象台)
- 「2005/08/16 宮城県沖の地震」(防災科学技術研究所)
- 「2005宮城県沖の地震(Mj7.2)の特集ページ」(東京大学地震研究所)
- 「2005年8月16日宮城県沖で発生した地震について」(筑波大学八木勇治助教授のページ)
- 「2005年 宮城県沖の地震 K-Net観測波解析速報」(建築研究所)
- 「宮城県沖を震源とする地震関連ページ」(国土地理院)
- 「米国地質調査所(USGS)速報」(USGS)
過去のお知らせ
- 「2005年8月16日宮城県沖地震緊急調査研究(平成17年度科学研究費補助金)」の「平成17年度科学研究費補助金(特別研究促進費)研究成果報告書」を公開しました。詳しくはこちらをご覧下さい。[2006年11月13日掲載]/li>
- 「Revisiting the three M~7 Miyagi-oki earthquakes in the 1930s : Possible seismogenic slip on asperities that were re-ruptured during the 1978 M7.4 Miyagi-oki earthquake」(海野・他)が,2006年4月25日にEarth Planets and Space誌 に受理されました。詳しくはこちらをご覧下さい。[2006年4月26日掲載]
- 2006年3月30日に,この地震の調査観測研究の成果報告会が開催されます。詳しくはこちらをご覧下さい。[2006年3月14日掲載]
- 第166回地震予知連絡会の資料を掲載しました。[2005年11月22日掲載]
- 研究成果の一部が「THE 2005 M7.2 MIYAGI-OKI EARTHQUAKE, NE JAPAN: POSSIBLE RE-RUPTURING OF ONE OF ASPERITIES THAT CAUSED THE PREVIOUS M7.4 EARTHQUAKE」として,Geophysical Research Letters誌に受理されました。詳しくは著者(岡田・柳沼・海野・河野・松澤・北・長谷川)までお問い合わせください。[2005.11.9 掲載]
- 今回の地震と想定されていた「宮城県沖地震」との関係を解明するため、文部科学省の科学研究費補助金による緊急調査(代表者=長谷川昭・東北大教授)が行われることが決まりました(研究計画概要)。[2005年8月19日掲載]
- 第165回地震予知連絡会の資料を掲載しました。[2005年8月22日掲載]
- 10月19~21日の日本地震学会秋季大会において、2005年8月16日の宮城沖の地震に関する緊急報告が行われます。