2008年7月19日11時39分に、福島県沖を震源とするMj6.9、最大震度4の地震が発生しました。この地震はプレート境界で発生した地震と考えられます。
釜石沖光ケーブル式海底津波計(東大・地震研)で記録された津波
(a) 本震の震央(星印)と海底津波観測点(四角印)。(b) 海底津波計TM1、TM2の記録。横軸は7月19日11時から13時までの2時間,縦軸は相対的な海面の高さ(cm)を示します。 12時4分頃からの変動が津波を示します。約12分後の12時16分頃、宮城県鮎川で津波が観測されています。
海底津波計の津波波形による津波波源
(a) 海底津波計の波形データから推定された津波の初期波高分布。赤色が隆起、青色が沈降を示します。(b) 津波波源の推定に用いた釜石沖の海底津波計の津波波形。横軸は地震発生からの経過時間(分)、縦軸は相対的な海面の高さ(cm)を示します。黒線が観測波形、赤線が理論波形を示します。解析には、地震発生後35分間の波形を使用しました。震央(星印)付近に推定された隆起域(最大隆起量:約3 cm)が、津波波源に相当すると考えられます。
(文責:対馬)
震源位置とその周囲の地震活動
今回発生した地震の震源位置(2008.7.19 M6.9,黒色の星) とその周囲の最近の地震活動(2002年以降のM6以上のプレート境界近傍の地震,赤色の星)を示します。コンターは、大地震のすべり域(Yamanaka and Kikuchi [2004], 山中, [2003, 2005, 地震学ノート]、小さい丸は、小繰り返し地震グループの位置を示します。小繰り返し地震の丸の色はすべりレートを示しています。今回の地震は、2003年M6.8の地震、2005年M7.2の地震の南側で発生し、比較的小繰り返し地震が少ない場所に位置します。プレート境界でのすべりの加速により活発化すると考えられる小繰り返し地震は、2008年2月ころから、この地震の南の福島〜茨城県沖でやや活発でした(→2008年の相似地震活動)。なお、図中の震源位置はすべて気象庁によるものを使用させていただきました。
(文責:内田)
遠地地震波形による地震時すべり分布
「遠地地震波形による地震時すべり分布」(岡田 知己)
2008年の地震と2003年10月31日(M6.8)の地震のすべり分布と余震分布。2003年の地震は米原・他(2008;連合大会)。背景の線は等深線を示します。左上には、2005年宮城県沖の地震(M7.2);Yaginuma et al. (EPS, 2006),1978年宮城県沖地震(M7.4);柳沼・他(2007;連合大会)、その他の地震:Yamanaka & Kikuchi (2004)のすべり量分布をあわせて示します。
Yagi et al.の方法にて、IRISによる遠地波形データを使用し、地震時すべり分布をもとめました。2008年の地震は2003年の地震の南西に位置し、すべり分布は重なっていません。2008年の地震のすべり域の拡がりは背景の地震や2003年の地震の余震の低調な領域に対応するように見えます。
(文責:岡田)
関連情報
- 「2008年7月19日11時39分ころ福島県沖で発生した地震について」(気象庁)
- 「地震のメカニズム情報」(F-net 広帯域地震観測網 防災科学技術研究所)
- 「EIC地震学ノート No.141 Nov. 02, 03」(東京大学地震研究所)