2022年 プレスリリース

山形-福島県境で群発地震を引き起こした地殻内の流体量を推定 群発地震の周期性、大地震との関係、金鉱脈との関連性を示唆 [2022/12/1]

 沈み込み帯での水の循環の理解は、地震の発生を始め多くの現象の理解にとって大変重要です。しかしこれまで、流体の大まかな分布や、地質学的スケールでの理論的な循環量が分かっているのみで、具体的に、どれだけ流体が蓄積していて地震等の現象と結びついているかはよく分かっていませんでした。

東北大学流体科学研究所の椋平祐輔助教、同大学大学院環境科学研究科の宇野正起助教、同大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの吉田圭佑助教は、資源工学・水理学分野の物理モデルを用いて、2011年東北地方太平洋沖地震の7日後に山形・福島県境で発生した群発地震について、群発地震を誘発した流体量を10^6~10^8 m^3と推定しました。この量の流体が群発地震発生領域付近に蓄積されていたことを世界で初めて明らかにしました。さらに、この流体量が100年〜10000年の期間で再びチャージされることを示し、1000年サイクルで発生する地震の規模マグニチュード(M)9クラスの大地震との関連を示唆した他、群発地震も金をはじめとする様々な鉱物脈を生成しうる可能性も示唆しました。

 これらの知見は沈み込み帯の様々なプロセスでの地化学的な議論や、異なる地質学的条件での群発地震の流体量推定の基となることが期待されます。

本成果は、2022年11月19日、英国Nature Research社が発行する科学誌Communications Earth & Environmentに掲載されました。

ソフトバンク独自基準点のデータを利活用するコンソーシアムを設立 〜高密度なGNSS観測網による新しい地球科学の創成と、研究成果の事業化を目指して〜[2022/8/29]

 地震や火山活動に伴う地殻変動や、対流圏における水蒸気量などを高い時間・空間分解能で把握することは、現象の理解のみならず、それらの現象に関連する自然災害の発生予測を実現する上で非常に重要です。

 日本の研究機関では、国土地理院が運用する全国約1,300カ所のGNSS観測網(電子基準点)のデータを活用し、高い精度で地殻変動場や水蒸気量の動態が推定されています。一方、ソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)は、GNSSの信号を利用したRTK測位により高精度な測位が可能なサービスを提供するための設備として、全国3,300カ所以上に独自のGNSS観測網(独自基準点)を設置しており、ここから得られるデータの地球科学への応用の期待が高まっていました。

 こうした背景を受けて、東北大学大学院理学研究科は、本センターの太田雄策准教授が中心となって、ソフトバンクとALES株式会社(以下、ALES)の協力の下、2社および国内の12研究機関18部局が参画する「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」を設立しました。本コンソーシアムでは、高密度なGNSS観測網であるソフトバンクの独自基準点から得られるデータを用いて、これまでにない高い時間・空間分解能で地殻変動や水蒸気量、電離圏などの動態を明らかにすることで、地球科学の分野における同社の独自基準点の活用方法を検証します。

 本コンソーシアムの活動によって、地球科学に関する幅広い研究が推し進められることで、さまざまな現象の理解が進むだけでなく、自然災害の高精度予測など、防災・減災に大きく貢献することが期待できます。また、ソフトバンクとALESは、GNSS観測データや測位技術の提供に加えて、本コンソーシアムでの研究成果に基づき、事業化の検討や産学官連携による防災・減災での利用の提言などを行う予定です。

「超多点」民間GNSS 観測網による地殻変動モニタリング 携帯電話事業者が運用するGNSS 観測網の地球科学への応用[2022/2/10]

 地震や火山活動にともなう地殻変動を高い精度で把握することは、現象の理解のみならず、それらの発生予測を実現する上で非常に重要です。日本では国土地理院が運用するGNSS観測網 (電子基準点、全国1,300点超)により、高い精度で地殻変動場が調べられています。その一方で、2019年11月以降、ソフトバンク株式会社により、測位サービスの高度化を目的とした超多点(全国3,300点超)の独自GNSS観測網(以下、ソフトバンク独自基準点)の運用が開始されました。
 
 東北大学大学院理学研究科の太田雄策准教授および北海道大学大学院理学研究院の大園真子准教授は、ソフトバンク独自基準点により、国土地理院の電子基準点網とおおよそ同等の精度で地殻変動を把握できることを初めて定量的に明らかにしました。この結果は、同観測網が大きな地震の震源像の把握や内陸活断層における地震発生の長期評価の高度化などに貢献しうることを示す重要な結果であり、国土地理院の電子基準点を補完する重要なインフラとして防災・減災に大きく貢献することが期待できるものです。

 この研究成果は2022年2月9日に国際学術誌 Earth, Planets and Space にオンライン掲載されました。