2021年 プレスリリース

巨大地震発生箇所のプレート下に異常構造を発見 ―構造異常体が巨大地震の発生に影響―[2021/4/27]

 M9.0以上の巨大地震の発生メカニズムについてこれまで数多くの研究が行われましたが、多くの未解明な点が残されています。東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センターの趙大鵬教授とJianke Fan博士(PD研究員、現在は中国科学院青島海洋研究所 准教授)は、地震波トモグラフィー法を用いて、これまでにM9.0以上の巨大地震が起った、日本列島を含む世界の6つの沈み込み帯の地下の詳細な3次元地震波速度構造を調べました。その結果、沈み込んでいる海洋プレート下のマントルに顕著な低速度異常体が存在することを明らかにしました。これらの低速度異常体の位置と、巨大地震の震源位置や破壊範囲に顕著な関連性が見られ、異常体の存在が巨大地震の発生や範囲に影響を及ぼしたと推測できます。本研究成果は、巨大地震発生メカニズムの解明およびその震源位置と破壊範囲の予測への重要な手がかりとなります。

 本成果は、英科学誌「Nature Geoscience」に4月27日(日本時間)に論文としてオンライン掲載されました。

Newtonの地球科学ランキングで東北大学が2位:趙 大鵬 教授が大きく貢献[2021/3/28]

 科学雑誌Newtonの2021年5月号の国内理工系大学ランキングの「地球科学」研究力ランキングで東北大学が2位となり,本専攻 沈み込み帯物理学分野の趙大鵬教授の研究が紹介されています.

このランキングは,イギリスの研究調査機関であるクラリベイト社の「トップ10%論文」の集計に基づくものです.2011年から2020年までの10年間に世界の主な学術雑誌に掲載された論文の中で,被引用数が各研究分野の論文全体の世界トップ10%に入る論文の数を,著者が論文発表時に所属していた国内の大学ごとに集計して順位をつけています.「地球科学」研究分野で世界トップ10%に入る論文を多く発表した研究者として,趙大鵬教授が以下のように紹介されました.

「2位の東北大学では,「地震波トモグラフィ」を使って,地球の内部構造,地震の発生メカニズム,火山の起源などの解明をめざす趙大鵬教授の成果に注目が集まっています.地震波トモグラフィとは,地震波が伝わる時間を計測することで地球内部の構造を可視化する,いわば “地球のCTスキャン” といえる技術です.」

東北沖地震震源域の拡がりを規定する地下構造を解明 プレート境界浅部の厚い堆積層がすべりの特性をコントロール[2021/3/23]

 2011年東北地方太平洋沖地震の巨大な断層すべりは日本海溝中部(宮城県沖)の海溝近くに限定され、南部(福島県沖)の海溝近くでは地震後のゆっくりとしたすべり(余効すべり)が進行しており、この地震の大すべりはなぜ南部へ広がらなかったかは不明でした。東北大学大学院理学研究科の中田令子助教らは、海洋研究開発機構海域地震火山部門の堀高峰上席研究員らとともに、この原因を明らかにするために、プレート境界面近くの構造モデルの構築とそれを用いた断層すべりのシミュレーションを行いました。南部の余効すべりが起こる範囲のプレート境界に厚さ1kmの低密度層(チャンネル層)をおいた構造モデルを想定すると、福島県沖で観測される負の重力異常が説明できます。この層による摩擦特性の違いを仮定したシミュレーションでは、宮城県沖では巨大地震が繰り返し発生し、福島県沖ではゆっくりとしたすべりが長期間継続することが再現されました。つまり、プレート境界面沿いのチャンネル層の存在が、2011年東北地方太平洋沖地震の大規模なすべりが南部へ拡大するのを妨げたと考えられます。

 この研究成果は、学術雑誌Scientific Reportsに2021年3月19日付けでオンライン公開されました。

スリーエム仙台市科学館における地震・噴火予知研究観測センター連携展示 [2021/1/21]

 2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震)による甚大な被害を目の当たりにし,当センターでは,津波や地震動の予測精度向上や,地震発生過程の解明を目指す研究を進めるだけでなく,サイエンスコミュニケーションを通じて被害軽減に努めることの重要性を改めて認識し,東北沖地震から10年目の本年3月11日に合わせて,スリーエム仙台市科学館と共同して連携展示を始めることになりました.

問合せ先
東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター
電話:022-225-1950
Email: inquiry-aob[at]grp.tohoku.ac.jp
※[at]を@に置き換えてください

日本地下の3次元地震波異方性構造を解明 ―プレート変形・マントル対流・地震火山の理解に重要な手がかり― [2021/1/21]

 地球内部の岩石には、「地震波速度異方性」という性質があります。地震波の伝播する方向によって地震波の伝播速度が異なるという物理性質で、地球内部岩石の変形、地殻の応力場、およびマントル対流のパターンなどを反映していると考えられています。
 東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの趙大鵬教授とZewei Wang博士(PD研究員、現在は中国南方科技大学 助教)は、従来の地震波トモグラフィー法を改良し、日本列島下の精確な3次元地震波速度異方性構造を明らかにしました。これにより、日本海溝から日本列島下に沈み込んでいる太平洋プレートおよびその周りのマントルにおける詳細な3次元地震波速度異方性構造を解明し、太平洋プレートの沈み込み、ならびに、太平洋プレートそれ自体の変形が日本列島下のマントル対流のパターンを支配することがわかりました。本研究成果は、日本列島の火山と地震の成因および地殻変動を理解する重要な手がかりになると思われます。

 本成果は、米科学誌「Science Advances」に1月20日に論文としてオンライン掲載されました。