人工地震を用いた火山体内部構造の研究

 国内の多くの火山は、噴火間隔が長く、通常は静穏な状態にあります。そのため、前項で述べたような地震活動や地盤変動に基づいてマグマの運動を推定する手法は使用できません。この種の火山における潜在的な噴火の危険度評価や、長期的噴火予測のためには、構造探査によって火山体の内部構造を調べ、マグマの存在形態とその時間変化を把握することが必要です。私たちは、人工地震を用いて火山の内部構造を調べるのに必要な、小型・軽量・低消費電力で高精度の時計を内蔵したデータ・ロガーを開発しました。このロガーは、火山噴火予知計画の下で実施されている火山体構造探査で用いられています。1997年に磐梯火山で実施した構造探査の成果を図4に示します。磐梯火山は、1888年をはじめとして山体崩壊を繰り返したことで有名です。山頂の下には周囲に比較して高速度の領域が存在していることがわかりました。これは、マグマ供給路の周りに固結した岩石が分布していることを示すものと解釈されます。

図4.人工地震探査によって求められた磐梯火山の速度構造。8ヶ所の発破を約300点のロガーで記録し、地震波伝播時間から3次元P波速度分布を求めた。その結果に基づいて山頂を通る東西断面の速度分布を示す。