地震・地盤変動連続観測に基づくマグマの運動の把握

 火山現象とマグマの運動の関係を研究するために、東北地方の8火山を対象に、計20ヶ所で、地震や傾斜・歪などの高精度連続観測を実施しています。研究成果として岩手火山の例を示します。

 岩手火山では、1998年4月~9月を中心に、活発な地震活動が発生し、明瞭な地盤変動も観測されたことから、火山噴火の可能性が指摘されました。約20ヶ所の臨時地震観測点と10ヶ所のGPS連続観測点を増設し、発生機構を解明した結果、以下の点が明らかになりました。
1)地震活動は、山頂の西側で始まり、次第に西方へ拡大し、最終的には東西約10kmの帯状領域に分布した(図1)。
2)GPSで観測された地盤変動の変動源は震源域西端付近と推定され、震源域の西への拡大とともに地盤変動源も西方へ移動した(図2)。

 このように、地震活動と地盤変動が密接に関連していたことから、両者は、岩手山山頂の西側に上昇し、西方へ伸展したマグマの貫入によって引き起こされたものと考えられます。1998年に観測された各種の現象の発生位置と速度構造の比較から、すべての現象は、西岩手火山の高速度域の中で発生していたことがわかります(図3)。以上の結果は、岩手火山に貫入したマグマの運動は地下構造によって規制されていたことを示唆します。

図1.1998年3月~10月に岩手火山で発生した地震の月別震央分布。地震活動は時間とともに西側へ拡大した。

図2.1998年2~3月、4~5月、6~7月の各期間における、GPS観測から求めた変位(赤矢印)、推定された変動源(黄丸)、ならびに変位の計算値(青矢印)。灰色の小丸は震源。

図3.岩手山山頂を通る東西断面における速度分布(右端のカラースケール参照)と、高周波地震(白十字)、低周波地震(白星)、超長周期震動(赤星)の震源、ならびに地盤変動源の開口割目(黄四角)と圧力源(黄丸)の分布。