北海道〜関東地方の沖合で周期的なスロースリップを発見 ―大地震の発生予測に新たな手がかり―
Uchida, N., T. Iinuma, R. M. Nadeau, R. Bürgmann, and R. Hino, Periodic slow slip triggers megathrust zone earthquakes in northeastern Japan, Science, 351(6272), 488-492, doi:10.1126/science.aad3108, 2016.
北海道〜関東地方の沖合のプレート境界断層の広い範囲で、周期的な「スロースリップ」が発生していることを地震および地殻変動データから発見しました。スロースリップは、人間が感じられるような揺れを起こさずにゆっくりと地中の断層がずれ動く現象ですが、これまで北海道・東北地方の太平洋側では広域にわたる周期的スロースリップの発生は知られていませんでした。今回発見されたスロースリップは、地域によって異なり、1〜6年の発生間隔を持ちます。その発生に同期してその地域でのM5以上の規模の大きな地震の活動が活発化しており、東北地方太平洋沖地震が発生した時期にも、三陸沖ではスリップが発生していました。このように周期的なスロースリップが発生しているときに大地震が起こりやすくなる傾向を活用すれば、それを地震・地殻変動観測で検知することによって、大地震発生時期の予測の高度化に貢献できる可能性があります。

-----------------------------------------------------------
[論文] 
[東北大学プレスリリース]
[バークレーニュース]
[Nature News]
[Eos (AGU)]

図/ 研究に用いた観測データおよび結果と大地震の発生との関係についての模式図.


1933年昭和三陸地震は複合破壊だった?
Uchida, N., S. Kirby, N. Umino, R. Hino, and T. Kazakami, The great 1933 Sanriku-oki earthquake: reappraisal of the mainshock and its aftershocks and implications for its tsunami using regional tsunami and seismic data, Geophys. J. Int., 206, 1619-1633, 2016.
1933年の昭和三陸地震(Mw8.4)は現在知られている最大の海溝海側の地震です。本研究では、3次元速度構造を用いた震源決定と波形の特徴から、その余震が海溝陸側と海側の両方にまたがって発生しており、海溝海側の地震により陸側のプレート境界に沿った地震が誘発された可能性があることがわかりました。また、津波の初動波形と、海溝海側での地震の分布を用いた考察から、海溝海側においても複数の断層が動いた可能性が示唆されました。さらに、海底地形および最近の地震活動との比較から、東北沖の海溝海側には、地震活動や断層の分布に地域性があり、そのなかの1つのセクションで1933年の地震が起きたことが示唆されました。このような海溝海側の地震活動の特徴は、沈み込むプレートの応力状態や、プレート境界の地震との相互作用など、海溝近傍の浅部沈み込み過程の特徴の一端を明らかにするものです。

図/3次元構造で再決定された本震から3ヶ月間の余震分布.
-----------------------------------------------------------

[論文PDF]
       


プレート沈み込みの加速が首都圏の地震数を増大させている?
Uchida, N., Y. Asano, and A. Hasegawa, Acceleration of regional plate subduction beneath Kanto Japan, after the 2011 Tohoku-oki earthquake, Geophys. Res. Lett., doi:10.1002/2016GL070298, 2016.
関東地方下の地震活動は2011年の東北沖地震後、長期にわたって活発な状況が続いており、大きな地震の発生が危惧されています。本研究では、関東地方下の3枚のプレート(太平洋プレート、フィリピン海プレートおよび陸のプレート)の境界で発生している繰り返し地震を用いて、この地域の地下のプレートの動きの時間変化を調べました。その結果、プレート境界面でのスロースリップの速度に加え、すべりの方向の時間変化を精度よく推定することにより、太平洋プレートとフィリピン海プレートの2つのプレートについて、沈む込み速度の加速が起きたことを突き止めました。このような沈み込みの加速が首都圏に地震数の増加をもたらした原因の1つと考えられます。

図/東北沖地震前後の地震数の推移と得られたフィリピン海プレートと陸のプレートの間の変位速度.
-----------------------------------------------------------

[論文PDF]
GRLのEditors’ Highlightsに選ばれました[GRLのページ]