地震はどれだけ大きくなりうるか?-繰り返し地震への東北沖地震の影響
Uchida, N., K. Shimamura, T. Matsuzawa, and T. Okada, Postseismic response of repeating earthquakes around the 2011 Tohoku-oki earthquake: Moment increases due to the fast loading rate, J. Geophys. Res., 120(1), 259-274, doi:10.1002/2013JB010933, 2015.
2011年の東北地方太平洋沖地震後に発生した大規模な余効すべり(地震発生後に起きる断層のゆっくりすべり)の影響により、 それまでM5程度であった岩手県釜石沖の繰り返し地震がM6程度まで大きくなったことが分かりました(図左)。 地震波形を用いたすべりの推定によると、東北地方太平洋沖地震後の最初の釜石沖繰り返し地震は、2008年の地震に比べすべり量がおよそ6倍になっただけではなく、 すべり域の範囲がおよそ6倍になっていました(図右)。これは、同じ領域が繰り返しすべるという、 これまで一般的に考えられていた繰り返し地震のモデルとは異なる現象です。 また、余効すべりの影響を受けたと考えられる東北地震後9ヶ月で3回以上の繰り返し地震を観測した42個の地震系列についても調べたところ、 東北沖地震前に比べ、地震後、平均で2.8倍の規模(モーメント)の地震が起きていたことが分かりました。 これらの規模が大きくなった繰り返し地震の分布は、測地観測により独立に推定された余効すべりの分布ともよく一致しています。 このような結果は、固着域への応力蓄積レートの違いにより、地震の規模が変わりうることを示しています。 本研究では、この規模変化の原因は固着域周辺の条件付き安定領域のふるまいによるものであると推定しました。 このような結果は、大地震の発生予測の際の地震規模の推定に際し、重要な結果と言えます。

図/ 釜石沖繰り返し地震のマグニチュード―時間プロット図(左)とすべり域の比較(右). すべり域とマグニチュード―時間プロット図の星の色は対応している.
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[論文PDF] 紹介記事[地震本部ニュース2014冬]
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