蔵王山総合観測

 東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センターでは、宮城・山形両県の県境に位置する蔵王山の観測研究のため、1992, 93年に蔵王山周辺に2箇所の定常観測点を設置し、地震計や傾斜計等による観測を継続的に行ってきました。

 2011年東北地方太平洋沖地震以後、震源域に最も近い活火山の一つである蔵王山ではその活動変化が懸念されるため、地震・噴火予知研究観測センターでは、蔵王山周辺の火山活動の観測研究をより推進することを目的に、固体地球物理学講座等の関係機関と協力して、2013年以降新たに地震計、傾斜計、GNSS、全磁力、重力等の観測強化を行いました。得られた観測データは、本センターにおける火山研究に用いるとともに、その多くは気象庁・防災科学技術研究所などの関係機関にリアルタイムで配信を行い,火山活動推移のモニタリング等に利活用されています。

 本計画は文部科学省「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」において、課題番号1202:「蔵王山周辺の総合観測」(代表:東北大学教授 三浦哲)に基づき実施しています。本研究の目的は、蔵王山周辺域において、稠密な地震及び電磁気観測、制御震源による地震波速度構造探査等を実施し、火山体直下の詳細な地震波速度構造や減衰構造、比抵抗構造等を推定することにより地殻深部から火山体浅部における流体分布を明らかにすることです。火山流体系の状態を把握するとともに、その情報を行政・地元防災機関と共有して、有効な防災・減災対策に結びつけることを目指しています。

蔵王山観測網

東北大学では、新たに地震計を6箇所(TU.FBU、TU.KMN、TU.KTT、TU.SSY、TU.TGT、TU.ZZU)、傾斜計を1箇所(UMNS)、GPSを6箇所(PZAO、SRIS、STMR、ZIZO、ZSRH、TU.ZAS)、全磁力を3箇所(DKTN、NMKW2、NOKM)に設置しました。一部の観測点は、オフラインで現地収録を行っています。図1、図2は、東北大学の観測点を赤色、気象庁の観測点を水色、防災科学技術研究所の観測点を緑色、国土地理院の観測点を白色で示しています。

ZaoVolcano図1.蔵王山周辺の観測点配置図

ZaoOkama図2.御釜(五色岳火口湖)周辺の観測点配置図

GPS-ZSRH図3.GPS観測点(ZSRH)

Proton-NOKM図4.全磁力観測点(NOKM)

全磁力繰り返し観測

東北大学では、仙台管区気象台と協力して、2014年から御釜(五色岳火口湖)周辺で全磁力繰り返し観測(約半年に1回)を実施しています。図5は、東北大学の測定点(T01〜T08)を赤色、気象庁の測定点(JMA1〜JMA6)を青色で示しています。

ZaoRepeat図5.全磁力繰り返し観測点配置図

Repeat-T07図6.T07測定点(2014年10月実施)

ハイブリッド重力観測

東北大学では、東京大学地震研究所と協力して、2013年から蔵王山周辺でハイブリッド重力観測を1年に1回実施しています。この観測は、基準点での絶対重力測定と多数の相対重力測定を組み合わせることにより、マグマの移動に伴う重力変化を捉えようとするものです。図7は、絶対重力測定点(TU.ZAS)及び相対重力測定点を示しています。

ZaoGlavity図7.ハイブリッド重力観測点配置図

Glavity-Kumanodake図8.熊野岳山頂測定点(2014年7月実施)

謝辞

本観測に際しては、宮城県・蔵王町・白石市・川崎町・山形県・山形市・仙台森林管理署・山形市滑川生産森林組合・蔵王ロープウェイ株式会社・山形大学・北海道大学大学院理学研究院地震火山研究観測センター・東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ大気研究センターのご協力を賜りました。記して感謝いたします。

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