相似地震の確率予測実験 (2008年7月28日更新)
はじめに 相似地震(小繰り返し地震)は、同じ小アスペリティの繰り返し破壊と考えられています。相似地震は、プレート間の大地震と同じ発生過程であること、 波形相関のみで同定されること、発生間隔の短い系列が多数あることなどから、予測モデルの評価に適しています。 そこで、本ページでは、確率予測手法を評価するために、相似地震の確率予測実験を行った結果について紹介します。
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確率の予測方法
相似地震がかなり規則的に発生することに注目し、発生間隔のデータだけから、 予測期間内に次のイベントが起きる確率を計算しました。予測のモデルは、計算 が容易で、成績のよい更新過程ベイズ統計対数正規分布モデルを使用しています。
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確率予測結果
2006年7月から2007年6月の1年間の予測(下図左)と結果(下図右)を示します。 発生確率が高いと予測されたグループでは地震が起こっている割合が高いことが分かります。 | ||
図.2006年7月から2007年6月の予測(左)と結果(右)
それでは、この結果はどのくらい”当たっている”といえるのでしょうか?
Brier score : (Pq-Ev)^2 の平均
平均対数尤度 : Ev*ln(Pq)+(1-Ev)*ln(1-Pq) の平均。
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下図は、"Brier score"と"平均対数尤度" を直感的に当たり具合の見当がつくと 思われる降水確率予報の成績(2006年の東京)と比べたものです。降水確率予報データは http://homepage3.nifty.com/i_sawaki/WeatherForecast/index.htmに よります。両指標とも降水確率予報で言うと3日から5日後の予測と 同程度という当たり具合といえます。 | ||
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図.本研究の予測成績(上:Brier score、下:平均対数尤度)と1週間後までの,東京の降水確率予報の成績の比較
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今後の予測と発展
下図は、2008年1年間の予測を図にしたものです。この予測がどのような結果になるかは今(2008年7月)はまだ分かりませんが、 どのような確率分布が予測精度がよいかをさらに検討することや、物理的なモデルを予測に組み込むことで、予測精度の向上につなげられるかもしれません。 | ||
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図.2008年1年間に相似地震127系列でイベントが発生する確率を地図上に
表示したもの
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補助資料
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2008年1年間についての予測系列の緯度、経度、平均M、および発生確率データ(csv形式、上図にプロットしたもの)
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関連する文献/発表
内田直希・松澤暢・平原聡・長谷川昭・笠原稔, 2006, 小繰り返し地震による千島・日本海溝沿いプレート境界の準静的すべりモニタリング, 月刊地球, 28(7), 463-469 岡田正実・高山博之・弘瀬冬樹・内田直希, 2007, 地震長期発生確率予測に使用する更新過程対数正規分布モデルのパラメータ事前分布, 地震2, 60, 85-100 岡田正実・内田直希・高山博之・弘瀬冬樹, 北海道・東北東方沖で発生する相似波形地震の発生確率予測, 日本地球惑星科学連合2007年大会, 千葉, 幕張メッセ, 2007年5月. 岡田正実・内田直希・前田憲二・高山博之, 相似地震の確率予測実験 ー統計モデルの成績と展望ー, 地震・火山噴火予知研究計画シンポジウム, 東京, 東京大学地震研究所, 2008年3月. 岡田正実・内田直希・高山博之, 相似地震の確率予測実験と成績検証, 地震研究所共同利用研究集会 地震活動の物理・統計モデルと発生予測, 東京, 東京大学地震研究所, 2008年7月.
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謝辞: 相似地震の同定には、東北大学のほか、北海道大学、東京大学の地震観測点の波形データを使用させて頂きました。 解析には,一部気象庁による一元化震源を使わせていただきました。
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