GPS観測・InSAR解析

InSARによる地震時変動の検出

陸域観測技術衛星「だいち」のLバンド合成開口レーダ(PALSAR)による地震前、地震後(2007年8月6日と2008年6月23日)の画像をJAXA/SIGMA-SAR(M.Shimada, 1999)を用いて差分干渉処理し、地震時の地殻変動を検出しました。求められた干渉縞の位置は、「キネマティックGPSデータによる地震時断層モデル(第2報)」によって推定された断層モデルとおおむね調和的ですが、変動量に違いがあります。今後得られた干渉画像とGPSデータに基づき、より詳細な断層モデルの構築を行う予定です。

謝辞:PALSARデータはPIXEL(PALSAR Interferometry Consortium to Study our Evolving Land surface)において共有しているものであり、PALSARデータの所有権は経済産業省 (METI) とJAXAにあります。また、InSAR解析にはJAXA/SIGMA-SAR(M.Shimada, 1999)を用いました。記して感謝致します。

参考文献:M. Shimada, Verification processor for SAR calibration and nterferometry, adv. Space Res. Vol.23, No.8, pp. 1477-1486, 1999.

(以上、文責:太田・三浦・大園)

キネマティックGPSデータによる地震時断層モデル(第2報)

国土地理院 GEONET観測点・原子力安全基盤機構・国立天文台水沢VERA観測所のデータと東北大学の観測データを統合処理し、地震時断層モデルを作成しました。速報で示した時点では、GEONET観測点「0913 (栗駒2)」や、東北大観測点「ICNS」のデータ、また他の東北大観測点データも数点が電話回線の不通により回収できていませんでしたが、それらデータの回収ができた事から、再度、断層モデルを推定しました。地震時変動はキネマティックGPS解析を行い、地震前25分と地震後25分の差を取り、地震時変動としました。解析にはGps ToolsVer.0.6.3. (Takasu and Kasai, 2005)を用い、IGSの速報暦とCODEの時計情報を使用しています。
速報解では矩形断層1枚での近似を試みましたが、今回は矩形断層を2枚仮定しました。推定された断層面はそれぞれ、走向、傾斜が異なりますが、どちらも北西方向に傾き下る断層です。また断層の配置は、これまで報告された地表変状(東北大・他や産総研など)の位置(図中赤□)に一致する様に試行錯誤を繰り返しました。推定された断層面は余震分布の震央、震源の深さ分布とも概ね整合的です。断層モデルにより期待される水平変動量は概ね観測値と一致しますが、鉛直成分に関しては、観測値の半分程度しか説明できていない観測点も存在します。推定されたモーメントマグニチュードはMw=6.9となりました。今後、InSARの干渉画像等とも比較し、より詳細な検討を進める予定です。

断層面 東経
(度)
北緯
(度)
深さ
(km)
長さ
(km)

(km)
走向
(度)
傾斜
(度)
滑り角
(度)
滑り量
(m)
北側断層 140.979 39.109 0.46 20.57 12.06 195.2 44.9 105.5 1.83
南側断層 140.907 38.927 0.40 12.57 10.10 225.3 25.0 80.9 3.53

謝辞:本研究は国土地理院 GEONET観測点・国立天文台 水沢VERA観測所のデータを使用しました。また、原子力安全基盤機構(JNES)が平成19年度、20年度に実施した内陸の活断層調査に基づく震源断層評価手法の検討事業で取得されたデータを使用しました。

(以上、文責:太田・大園・飯沼・三浦)

断層直上のGPS観測点(一関市・祭畤)における地震時変動

2003年に当センターが一関市厳美町字祭畤(まつるべ)に設置したGPS連続観測点ICNS(位置は震源の南西2.5km程度)のデータを6月20日に回収し、キネマティックGPS解析により5分毎の座標変化を推定しました。解析には、本ページの別項、「キネマティックGPSデータによる地震時断層モデル(速報解)」と同様に、Gps Tools Ver. 0.6.3. (Takasu and Kasai, 2005)を用いました。本震発生直後に停電による欠測が見られますが、その後一時的に電力が回復し、地震前後の変動を明瞭に捉えることに成功しました。地震発生直前の25分間と、電力が回復した11時15分頃から25分間の差を地震時地殻変動と仮定しました。その結果、東方向に45cm, 北方向に34cm, 隆起方向に156cmの大きな変位が観測されました。 この結果を防災科学技術研究所がICNS観測点から数百mの位置に設置している一関西観測点における強震動記録による永久変位の推定結果と比較すると、変位量、方向(N52E)ともに整合的な結果となっています。

謝辞:ICNS観測点のデータ回収に当たっては、一関市・一関市教育委員会のご協力を頂きました。ここに記して感謝致します。

(以上、文責:太田・大園・三浦)

キネマティックGPS 解析による地震波動と永久変位の検出(速報)

原子力安全基盤機構による観測点SRHNとOTSR観測点において1秒サンプリングデータのキネマティックGPS解析より明瞭な地震波と永久変位が観測されました。(観測点配置図は別項「キネマティックGPSデータによる地震時断層モデル」を参照下さい。)SRHNの東西成分では変位開始から7秒程度で最大27cm程度の変位(地震波)を記録し、その後永久変位を東西方向で15cm程度記録しています。こうしたキネマティックGPS解析では地震波動と永久変位を同時に記録できるというメリットがありますが、その特徴を良く示した事例と言えます。

解析諸元:
使用ソフト:Gps Tools Ver.0.6.3
使用暦:IGS速報暦+CODE速報時計情報
サンプリング:1秒
座標値確率過程:ホワイトノイズ

謝辞:本研究は原子力安全基盤機構(JNES)が平成19年度、20年度に実施した内陸の活断層調査に基づく震源断層評価手法の検討事業で取得されたデータを使用しました。

(以上,文責:太田)

キネマティックGPSデータによる地震時断層モデル(速報解)

国土地理院 GEONET観測点・原子力安全基盤機構・国立天文台水沢VERA観測所のデータと東北大学の観測データを統合処理し、地震時断層モデルを作成しました。地震時変動はキネマティックGPS解析を行い、地震前 25分と地震後25分の差を取り、地震時変動としました。解析にはGps ToolsVer.0.6.3. (Takasu and Kasai, 2005)を用い、IGSの速報暦とCODEの時計情報を使用しています。
インヴァージョン解析により推定された断層モデルは西北西に傾き下る断層であり、余震の震央分布(東北大自動処理)とは良く一致します。断層上面の深さが非常に浅く決定され、これは地表断層が見出されたという結果と整合的です。推定されたモーメントマグニチュードはMw=6.8となりました。今後,余震分布の鉛直断面等とも比較しより詳細な検討を進める予定です。

経度 緯度 断層上端深さ 長さ 走向 傾斜 滑り角 滑り量
(m)
140.94978 39.10969 0.31776 29.50335 15.67231 199.35679 37.42481 88.73577 1.55520

参考文献:Takasu, T., and S. Kasai (2005), Development of precise orbit/clock determination software for GPS/GNSS, the 49th Space Sciences and Technology Conference, Hiroshima, Japan (in Japanese)

謝辞:本研究は国土地理院 GEONET観測点・国立天文台 水沢VERA観測所のデータを使用しました。また、原子力安全基盤機構(JNES)が平成19年度、20年度に実施した内陸の活断層調査に基づく震源断層評価手法の検討事業で取得されたデータを使用しました。

(以上,文責:太田・大園・飯沼)

奥羽脊梁山地歪集中帯

Miura et al. (2004) は、GPS観測データを用いて東北地方の歪分布を調査した結果、奥羽脊梁山地に沿って東西方向の短縮歪が周辺に比べて大きくなっていることを見出し、活発な微小地震活動にも対応しているとしています(下図)。今回の地震もこの歪集中帯の中で発生したことがわかります。

1997年から2001年までの期間の国土地理院、東北大のGPS観測データから求めた東西歪分布。青が短縮歪、赤が伸張歪の領域を示す。ほぼ奥羽脊梁山地に沿って青色の短縮歪が顕著である。南北緑の点は同じ期間に地殻内で発生した微小地震を、赤の点は岩手・宮城内陸地震の余震を示す。

参考文献: Miura, S., T. Sato, A. Hasegawa, Y. Suwa, K. Tachibana, and S. Yui, Strain concentration zone along the volcanic front derived by GPS observations in NE Japan arc, Earth Planets Space, 56, 1347-1355, 2004.

(以上,文責:三浦)