グローバル地震火山研究グループの概要

沿革

本センターでは長年、プレート沈み込み帯で発生する様々な地震・火山現象を解明するため、主に東北日本弧をターゲットとして観測・研究を続けてきました。一方でプレートの沈む込みは全地球規模で起きている固体地球内部の運動の一端であることから、現象の理解をさらに深めるためには、世界各地、さらには全地球をターゲットとした地震・火山研究を行い、知識の統合を図る必要があります。このような経緯から2014(平成26)年4月、センター内部の組織再編に伴い、全地球規模の地震・火山研究を担当するグループとして「グローバル地震火山研究グループ」が発足しました。

主な研究内容

本研究グループの主要な研究テーマは、「地震波トモグラフィ」と呼ばれる手法を用いた地球内部構造の推定です。地震や火山噴火は、地球内部の物質の状態や運動を反映して発生します。従って、これらの現象を理解するためには、まず地球の内部構造を詳細に知る必要があります。しかし人類がこれまでに掘った一番深い穴は、ロシアのボーリングコアの12 kmであり、地球半径6371 kmのわずか0.2%に過ぎません。一方、様々な場所で発生した多数の地震から放出された地震波を、多数の観測点で観測すると、震源と観測点までの距離が同じでも、場所によって地震波の走時に差が現れます。これを利用すると、地下の岩石の地震波速度が平均的な速度構造よりも早いか遅いかがわかり、目では直接見ることのできない地下構造(地震波速度構造)の3次元画像を得ることができます。この手法が「地震波(走時)トモグラフィ」です。ちょうど医療のX線CT(コンピューテッド・トモグラフィ)で、切らずに体の中の画像を得るのと同じ原理です。

本研究グループでは、精度と効率のよい地震波トモグラフィ手法の開発者である趙大鵬教授を中心に、ローカルスケールからグローバルスケールまで、様々な対象について研究を進めています。最近の研究トピックの一部を挙げても

  • 東北日本の前弧域の地下には、沈み込んだ太平洋プレートから脱水した水が上昇しており(=「Water Wall」)、これが地殻内の断層に入り込むことで内陸の被害地震を誘発している可能性を示唆(Zhao et al., 2015, GJI
  • 長白山の火山活動は、マントル遷移層に滞留する太平洋スラブからの脱水とリンクしている可能性を示唆(Zhao & Tian, 2013, GJI
  • 西南日本では非地震性のフィリピン海スラブが深さ460 kmまで沈み込んでいることを解明(Huang & Zhao et al., 2013, JAES
  • 新しい全マントルP波速度構造モデルの構築(Zhao et al., 2013, GR
  • アポロ月震計データを用いた月のトモグラフィ解析(Zhao et al., 2012, GPC

と、本研究グループの研究が非常にバラエティに富んでいることがおわかりいただけると思います。また同様な手法を地震波の振幅データに適用した地震波減衰構造の推定や、方位による走時の違いを利用した地震波速度異方性のトモグラフィ解析も行っています。

他に本研究グループでは、コンピュータ・シミュレーションで地震波伝播を再現する研究も行っています。震源から出て観測点で観測される地震波形は、複雑な震源過程や地球内部の強い不均質の影響を受けて、複雑な波形となります。このような観測波形を解析して、震源や地球内部の情報を得る方法の一つは、これらをモデルとして与えてシミュレーションを行い、得られた理論波形と観測波形を比較することです。本研究グループでは、現実に近い地震波伝播を効率よくシミュレーションする手法を開発し(例えば、Toyokuni & Takenaka, 2012, PEPI)、様々な地域を対象にシミュレーションを行っています。

また本研究グループでは、北極グリーンランドにおける地震観測も行っています。近年は地球の気候変動によりグリーンランド氷床の融解が進行しているため、融解に伴う氷の振動を地震波で捉えるプロジェクトが国際共同で進められています。本研究グループでは毎年観測隊に参加して氷床上の地震観測点のメンテナンスを行うとともに、得られたデータの解析を進めています(Toyokuni et al., 2014, AR)。