2018年 プレスリリース

九州を南北に分裂させる地溝帯の構造を解明 -2016年熊本地震の発生とも関連- [2018/10/23]

 東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの趙大鵬教授、修士学生の山下慧氏(現:気象庁)と豊国源知助教の共同研究グループは、2016年熊本地震の震源域をターゲットとして、九州全域の詳細な3次元地下構造を調査しました。結果として、この地震の震源直下には水の存在が示唆され、地震発生に水の挙動が深く関わっていることが推察されました。また九州を北東-南西に縦断する「別府-島原地溝帯」に沿った地殻と上部マントルの構造を調べたところ、熱いマントル上昇流が主に活火山の下に存在していることが判明しました。この事実は別府-島原地溝帯が、沖縄トラフの北への延長、中央構造線の西への延長、及び活火山下の熱いマントル上昇流、といった三つの要因の組み合わせで形成されたことを示唆します。

 この研究成果は、2018年10月19日18時(日本時間)に英科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動が原動力となり、6年弱の間に同じ活断層が繰り返し動いたことを発見 [2018/8/7]

 東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)の福島洋准教授、遠田晋次教授、同大学院理学研究科の三浦哲教授らの研究チームは、2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震、マグニチュードM9.0)の後に、茨城県北部にある活断層が5年9ヵ月という短い間に繰り返し動き、M6クラスの地震を2度引き起こしたことを突き止めました。また、同チームは、最初の地震のあと、東北沖地震の余効変動により活断層沿いにきわめて大きなひずみの蓄積が急速に進行したため、わずか数年で活断層が繰り返し動くことになったと推定しました。本研究成果は、地震発生確率の算定や長期予測の考え方を根本から変える可能性があります。

 この研究成果は、2018年8月6日(日本時間8月7日)のNature Geoscience誌に掲載されました。

2011年東北地方太平洋沖地震の発生メカニズムを解明 -上と下の両プレートのより固い岩盤同士のぶつかりあいで大地震が発生- [2018/6/21]

 東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの趙大鵬教授とLiu Xin博士(現:中国海洋大学准教授)は、2011年東北地方太平洋沖地震の震源域におけるプレート構造を調査し、この大地震の発生は、震源域上のオホーツクプレートとその下の太平洋プレートといった両方のプレート内部にある不均質構造にコントロールされたことを明らかにしました。また、震源断層の上も下も周りに比べてより固い岩盤ででき、それらがぶつかりあうことで大地震が起こりました。この研究結果は、謎が多いプレート境界域の巨大地震の発生メカニズムを明らかにするための重要な手がかりになると考えられます。

 この研究成果は、2018年6月20日13時(日本時間)に米科学雑誌「Science Advances」に掲載されました。

「スロースリップ」による水の移動を解明 〜関東地方の地下深くで天然の注水実験か?〜 [2018/4/10]

 東京工業大学 理学院 地球惑星科学系の中島淳一教授と東北大学 大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの内田直希准教授は、茨城県南西部のフィリピン海プレートの上部境界周辺で発生する地震の波形を解析することで、プレート境界で約1年周期の「スロースリップ」が発生し、それに伴って水が浅部に排出されていることを明らかにした。
 本成果は、スロースリップによってプレート境界の水が移動することを示す初めての観測であり、プレート境界地震の発生予測の高度化に向けて重要である。これまでプレート境界地震の発生予測の際にはスロースリップによる応力変化の影響だけが評価されていたが、本成果によって水の排出も考慮する必要があることが明らかになった。

 この研究成果は2018年4月9日(英国時間)に英国科学誌「Nature Geoscience(ネイチャー・ジオサイエンス)オンライン版」に掲載されました。